伝統の芸に酔う…
舞伎座の“吉例顔見世大歌舞伎-仮名手本忠臣蔵”に行ってきました。昼の部と夜の部とで通し狂言だったのですが、僕は夜の部でしたので後半の名場面、五段目、山崎街道鉄砲渡しの場、山崎街道二つ玉の場、六段目、与一兵衛内勘平切腹の場、七段目、祗園一力茶屋の場、十二段目、高家表門討入りの場、高家奥庭泉水の場、高家炭部屋本懐の場、両国橋引揚の場を観ました。
主な配役は、五・六段目、早野勘平に尾上菊五郎丈、女房お軽に中村時蔵丈、母
おかやに中村東蔵丈、千崎弥五郎に河原崎権十郎丈、不破数右衛門に市川段四郎丈、判人源六に市川左團次丈、斧定九郎に中村梅玉丈、一文字屋お才に中村芝翫丈です。続いて七段目、大星由良之助に片岡仁左衛門丈、遊女お軽に中村福助丈、赤垣源蔵に中村松江丈、富森助右衛門に市川男女蔵丈、斧九太夫に松本錦吾丈、大星力弥に市川門之助丈、寺岡平右衛門に松本幸四郎丈です。そして、十一段目、大星由良之助に片岡仁左衛門丈、小林平八郎に中村歌昇丈、竹森喜多八に中村錦之助丈、赤垣源蔵に中村松江丈、佐藤与茂七に中村萬太郎丈、小汐田又之丞に澤村宋之助丈、富森助右衛門に市川男女蔵丈、大星力弥に市川門之助丈、原郷右衛門に大谷友右衛門丈、服部逸郎に中村梅玉丈、でした。
名優達の演技に火花が散った舞台でした。まずは、仁左衛門丈の姿の良さ!最
高です。前回は女殺し油地獄の与兵衛でしたから、そのイメージとはガラッと変わって、凛々しい姿です。特に、一力茶屋の場で、由良之助がこれまでの怒りを込めて九太夫を打擲するところや本懐を遂げて亡き君主の菩提寺に向かう最後の場面は、本当に仁左衛門丈のきりりとした格好の良さが際立つところです。
五・六段目の勘平の菊五郎丈も素晴らしかったと思います。自ら義父を殺してし まったと思い込み悩むところから、数右衛門と弥五郎に「主君の恥辱」と言われ、二人を押し留めて、事情を語り腹を切るシーン。そして、自分が義父を殺していないことがわかり、仇討の仲間にも連判できるということを見定めて死んでいく…そんな勘平の心情の切なさが、切々と伝わってきました。
また、七段目では、茶屋の華やかな舞台で物語が繰り広げられるわけですが、由良之助の世を忍ぶ仮の姿の粋な遊び人の姿と暴君の仇討を忘れない家老との間を行きつ戻りつする仁左衛門丈の演技に注目です。しかし、何と言ってもこの場面では、福助丈演ずるお軽が素晴らしいと思います。父を失い、そして、最愛の夫がすでにこの世にいないことを知ったお軽の嘆き。悲嘆にくれるその姿は、まさに息を呑むような演技でした。その前のシーンがコミカルなシーンなだけに、悲しみが際立ちます。これにお軽の兄を演ずる幸四郎丈がからみ、観る者の心を舞台に引きずり込んでいきます。
とても素晴らしい舞台でありました。
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