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2009年10月12日 (月)

アナテフカ村で父親の情愛に涙する-“屋根の上のヴァイオリン弾き”を観る

Pa100171 “屋根の上のヴァイオリン弾き”を日生劇場で観ました。主なキャストは、テヴィエに市村正親さん、ゴールデに鳳蘭さん、ツァイテルに貴城けいさん、ホーデルに笹本玲奈さん、チャヴァに平田愛咲さん、モーテルに植本潤さん、パーチクに良知真次さん、フョートカに中山卓也さん、Pa100170 ラザールに鶴田忍さん、アブラムに石鍋多加史さん、ラビに青山達三さん、巡査部長に廣田高志さん、イエンテに荒井洸子さん、シュロイムに真島茂樹さん、フルマ・セーラに園山晴子さん、ツァイテル婆さんに高塚いおりさん、でした。

考えてみると、僕が初めて舞台でミュージカルを観たのがこの作品でした。劇場は帝国劇場で、森繁久彌さんのテヴィエでした。その時は、特に今のようにミュージカルにはまっていませんでしたので、それ以降、あまりこの作品に縁がなく、今日まできてしまいました。今回は、劇場もキャストも、もちろん前回の観劇の時とは違っていますが、なんとなく懐かしい思いを持ちながらの観劇となりました。

この作品は、長い間迫害され続けてきたユダヤ民族の悲しみを縦糸に、テヴィエの父親としての娘への愛情を横糸にして紡ぎだされる、笑いとペーソスに満ちた物語です。

Pa100169 この作品の見所は、何と言っても、テヴィエの三人の娘に対する情愛ではないでしょうか。結婚相手は親が決めるもの、そんなしきたりを守って生きてきたテヴィエ。ところが長女のツァイテルは幼なじみである貧乏な仕立て屋のモーテルと結婚したいと言ってくる。次女のホーデルは革命に情熱をかける貧乏な学生と恋に落ち、三女のチャヴァはあろうことかユダヤ人と対立するロシア人の若者と恋に落ちてしまう…テヴィエは、その度に、とまどい、怒り、悲しみ、しかし、結局、娘への愛情を最優先させていきます。そのテヴィエの姿がとても良いのです。森繁テヴィエもとても味のある演技ではありましたが、市村さんのテヴィエは、森繁テヴィエとはまた一味もふた味も違った父親テヴィエを演じていました。特に、ホーデルがパーチクを追って、アナテフカの村を去っていく時のテヴィエとのやり取りは、本当に涙を誘います。ユーモアがあって、少し頑固で、とても愛情深いテヴィエを好演されていました。

この作品で、好きな場面は、ツァイテルとモーテルとの結婚式の場面です。おめでたい席でありながら、この場面は、この先のアナテフカ村の住民の運命を予感するような哀愁を帯びた“サンライズ・サンセット”で始まります。列席者全員がロウソクを手に持ち、この歌を歌うシーンは涙が出るほど美しいのです。そして、その場面が終わると、やがて、華やかなボトルダンスのシーン、楽しい宴が続きますが、しかし、その喜びも長くは続かないのですが…

このお祝いの場面の歌には手拍子が入ります。この手拍子は、独特な形で、手を前に押し出すようにして手拍子をします。これ、かつて倍賞千恵子さんが出演していたときにインタビューで「私たちの幸せをお客様に差し上げると言う思いを込めて、手を前に押し出すように拍手しているんです。」と話していたのを今も覚えています。その当時と変わらぬ拍手でした。

この舞台、市村さんはやはり素晴らしい。頑固で、けれども愛情深い父親像をとても活き活きと描き出していました。そして肝っ玉お母さんともいうべき鳳蘭さん、このお二人のコンビはとても素敵です。また、三姉妹もとても良かったように思います。長女の貴城けいさんはとてもきれいでしたし、笹本玲奈さんは相変わらず達者な演技でした。そして、平田愛咲さん。とても今回がミュージカル初出演とは思えない演技、これからが楽しみな女優さんです。また、高塚いおりさんのツァイテル婆さんは、とても可愛い、チャーミングなお婆ちゃんでした。高塚さんは今回の公演で、この作品に400回連続出演を達成するとのこと。おめでとうございます!15年の間、同じ作品に出演し続けると言うことはとても凄いことだと思います。こういう俳優さんの存在があるからこそ、長く作品が続くのですね。

☆ このミュージカルをまだ観ぬ人へ…

1905年、帝政時代のロシアの寒村、アナテフカ村。その村に住むテヴィエは、酪農を営みながら、25年連れ添った妻、ゴールデと5人の娘と暮らしています。この村は、ユダヤ人が穏やかに暮らしている村ですが、ロシアではユダヤ人迫害が頻繁に行われており、近くの町にまでそれは及んできていました。しかし、今はまだ平穏なアナテフカ村。

ここで、テヴィエ達村人が長い間暮らしてくることができたのは、彼らが“しきたり”を守ってきたからこそ、とテヴィエは考えています。全てに、“しきたり”、“しきたり”!これがあるからこそ、屋根の上のヴァイオリン弾きのように危なっかしい場所でバランスをとって暮らしていけるのだと。

テヴィエには三人の年頃の娘がいます。“しきたり”では、結婚は仲人が仲立ちをして、父親が許すもの。しかし、ツァイテルは幼なじみのモーテルという恋人がいて、次女のホーデルは革命に情熱を傾ける学生と、三女のチャヴァは敵であるはずのロシア人の若者と、それぞれ恋に落ちてしまいます。“しきたり”と娘への愛情に苦悩するテヴィエ。この三人の娘の愛の行方は…??そして、アナテフカ村の住民の運命は…?

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